The Legend Of Manilla Road

11th

Spiral Castle(in 2002)


Spiral Castle
LEXICON
Reviews / Epics / Tracks

〜Reviews〜

「『Crystal Logic』以来の傑作」
──『METAL EPIC』誌──


名作『Crystal Logic』(1983)に次ぐ偉大な傑作が誕生した──2000年に衝撃の再結成を果たし、長きに渡る沈黙を打ち破ったエピック・メタル・シーンの重鎮マニラ・ロードは、強烈無比な新作『Atlantis Rising』(2001)と共に熱烈な信者たちのもとへと帰還すると、すぐさま次の攻勢に転じた。エピック・メタルの創始者であるマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)が沈黙のおよそ9年間のうちに溜め込んだ比類なき才能は、一旦作品を通じて外の世界に放出されると、噴き上げる原始の間欠泉の如く、その後も巨大な爆発を続けた。既に再出発したマニラ・ロードの快進撃を妨げる外壁はなく、またこれを止めることすら不可能な事態であった。マニラ・ロードの第二章は栄光のうちに幕を開けた。

マニラ・ロードにとって第10作目となる『Atlantis Rising』は、読んで文字の如く、バンドの"復活"を告げるために最良の作品であった。『Atlantis Rising』では過去の作品を遥かに上回る圧倒的なサウンド・プロダクションと新ヴォーカリスト、ブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)が持ち込んだ強烈なアグレッションによって、マニラ・ロードのエピック・メタルは更なる高みへと上り詰めることに成功した。楽曲の充実は熱狂的なファンをも唸らせ、エピック・メタルの始祖がマニラ・ロード以外には存在しない事実を証明した。コンセプトの面でも大きな進歩を遂げ、マーク・シェルトンはアトランティス大陸に関連する古代神話とクトゥルー神話を織り交ぜて壮大なストーリーを作り、更にそこに北欧神話の世界観を加えるという前代未聞の手法を用いて革命的な一大叙事詩を描き出した。他の追従を許さないばかりか、マニラ・ロードは独自の世界観を徹底的に追求し、ただひたすらに己の道を突き進んだ。然り、それこそがマニラ・ロードのやるべき仕事であったのだ。

マニラ・ロードの躍進を止める者は誰もいない。マーク・シェルトンの強靭な意志によって決起し、マニラ・ロードはただ一つの道を極めんと行軍を続ける。過度な評価や商業的な成功とは無縁の世界がマーク・シェルトンの眼前には広がっており、その先に待ち構えているものは己の飽くなき探求欲を満たす知識の泉のみである。恰もミーミルの泉の究極の知識を求めたオーディンの如く、何れはマーク・シェルトンもその泉の水を飲み干すことになろう。しかし、究極の知識を手にするためには、それに最も相応しい代償を支払わなければならなかった。

エピック・メタル──マニラ・ロード自身が『Crystal Logic』で生み出したその特異な分野の歴史は、今再びマニラ・ロードによって塗り替えられようとしている。マニラ・ロードが生み出した真の傑作『Spiral Castle』がその重要な役割を担うことになろう。古典的なエピック・メタルの基礎を捉えた80年代へと原点回帰するヘヴィかつメタリックなサウンドを有し、過去のチープさを払拭した現代技術で録音された『Spiral Castle』は、何人にも有無を言わせず、問答無用の真性エピック・メタル作品として誕生したのである。

本作では、これまでにマニラ・ロードが一貫して追求してきたH・P・ラヴクラフトの暗澹たる怪奇幻想の世界と北欧神話に連なる勇猛果敢な英雄譚が各楽曲に脈動感を与え、唯一無二の叙事詩的世界を作り出すために大いなる貢献を果たしている。耳を劈くような重厚かつ鋭利なサウンドによって構築され、尚且つ劇的かつヒロイックな旋律を多用した理由の一つには、これらの雄大な世界観を徹底的に表現するという明確な目的がある。『Spiral Castle』に無駄な音など収録されていない。我々が思うに、マニラ・ロードというバンドは生涯に渡り叙事詩的音楽を追求することをやめないであろう。

マニラ・ロードが到達した一種の頂点である『Spiral Castle』は、凄絶な緊張感によって支配され、一切の妥協と迷いがない。当然の如く、孤高を極めた深遠な世界観は人を選ぶ。今回マニラ・ロードが上り詰めた山の頂きに挑戦する者は恐らく誰もいないであろう。この偉大な傑作はマニラ・ロードの真の信奉者によってのみ正当な評価を受け、アンダーグラウンド・シーンの頂点に君臨する定めにあるのだ。音楽業界は完全にマニラ・ロードの存在を歴史から抹消したが、今この瞬間にも地下で巨大な妖蛆が蠢いており、密かに力を蓄えていることを彼らは知りもしない。我々は愚直にもその強大な存在に気付かないだけであるのだ。最も、この妖蛆に出来ることは僅かな信奉者を増やすことくらいで、穢れた地上の微光を敢えて浴びることなどはしないのだが。


〜Epics〜

・北欧神話
・十字軍
・剣と魔法
・『クトゥルフ神話』 / H・P・ラブクラフト

歌詞には、前作『Atlantis Rising』の影響を含む一部の楽曲と、従来の「剣と魔法」の世界観、及び中世の信仰に関する記述が見られる。


〜Tracks〜

1. ゲイトウェイ・トゥ・ザ・スフィア
Gateway to the Sphere
鋭利なリード・ギターの奏でるヒロイックな旋律を基盤とした劇的なイントロダクション。圧倒的なサウンドが放つ怒涛の高揚感によって、これまでのマニラ・ロードの作品を超越した壮絶なプロローグを飾る。既に孤高なるエピック・メタルの世界は開始された。

2. スパイラル・キャッスル
Spiral Castle
8分に及ぶタイトル・トラック。すべてのマニラ・ロード信者待望の名曲である。H・P・ラヴクラフトからの暗い影響と北欧神話の雄大な世界観を合わせ持つ激烈な内容。劇的かつヒロイックなサウンドという形容は、この楽曲のためにあるようなもの。マーク・シェルトンのクリーン・ヴォイスとブライアン・パトリックの唸り声を合わせた展開も秀逸。

3. シャドウ
Shadow
80年代の伝統的なエピック・メタルのサウンドを重厚かつ破壊的なまでに鋭利にした楽曲。情け容赦のない鋼鉄のリフと激しいリズムで徹底的に高揚感を煽る。

4. セヴン・テンペスト
Seven Trumpets
悪魔ベリアルをモチーフとした楽曲。アンダーグラウンド特有の薄暗い雰囲気と劇的な緩急が融合したエピック・メタルである。後半ではエピカルなギターソロも導入する。

5. マーチャンツ・オブ・デス
Merchants of Death
十字軍の悲痛な宿命が叙述されている。テンプル騎士団は信仰の対象として、悪魔バフォメットを崇拝していた歴史がある。およそ10分に及ぶ大作であり、古典的なエピック・メタルのサウンドに独特の暗いムードが重なる。マニア以外には全く受け入れられない暗澹たる音楽性を有し、その手のファンには確実にアピールする。カルト的な空間を即時に作り出すマーク・シェルトンのエピカルなギターソロも健在である。

6. ボーン・アポン・ザ・ソウル
Born upon the Soul
ソード・アンド・ソーサリー・サウンドを有するマニラ・ロードが帰還した。幻想的な古代の雰囲気を漂わせ、漢臭いメロディを周囲に蔓延させる大仰なそのスタイルは、もはや不動のものである。本曲は終盤まで途轍もないヒロイズムを披露する傑作。中東風の雰囲気があるのも特徴的だ。なお本曲は魔術の起源を求めるある男の探索行が題材となっている。

7. サンズ・オブ・タイム
Sands of Time
ストリングスを用いた本編のエピローグ。およそ7分に及ぶ。"Born Upon the Soul"の怪しげな雰囲気を引き継ぎ、ストリングスを用いた妖艶極まるフレーズが全編を彩る。これは完全に『コナン(Conan)』の世界だが、あまりにも徹底しているため、万人の評価は得られそうにない。


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