EPIC WAR

HISTORY Y

Lindisfarne


エレミヤの信託:主は我に告げられた。"北より災いが起こり、この地に住まうもの全ての上に臨むであろう"と。


Christian Side:

8世紀の後半、ノーサンブリアリンディスファーンは比類なきキリスト教徒の聖地だった。
リンディスファーンは北部イングランドにおけるキリスト教化が始まった記念すべき地であり、リンディスファーンのケルト教会修道院にかつて住まっていたという聖人アダイン聖カスバードの驚異的な遺品と遺骨が収められていた。この二人の偉大なキリスト教徒は、7世紀にこの教会に住み、貞淑な生涯を送りキリストの辛抱者に崇められていたのだった。しかし紀元793年、このノーサンブリアの地にて恐るべき前兆が巻き起こり、神聖なる聖職者らの聖地を天変地異の如く揺るがした。アングロ・サクソンの伝説的な年代記にはこの災いの光景を、空を駆け抜ける広大なる光の帯、暴風の如き旋風、更には天空を超えて飛び灼熱の炎を吐く竜の姿として表した。すぐさまこれらの畏怖すべき出来事に続き、肥沃だった聖地ノーサンブリアには異例の大凶作が訪れ、キリスト教の修道士らを恐怖の深淵へと叩き落とした。そしてキリスト教徒達の世界では窮極的に信じ得ない冒涜的な出来事が、この年の6月8日にリンディスファーンを襲ったのであった。恐るべき異教徒達はキリスト教の神の住まう聖地リンディスファーンに猛然と襲い掛かり、鬼神の如き剣撃の乱舞で神に仕える聖職者達の純白の法衣を血祭りにあげたのだった。


Viking Side:

の異教徒は荒れ狂う海より来った。
三隻の船に乗った北の男達の共同体の戦士が、イングランド人を始めて襲ったのは787年のことだった。この記録はヴァイキングの時代の先史として、アングロ・サクソン年代記に刻まれた。そして793年、北の男達の共同体は北イングランド、ノーサンブリアのリンディスファーンへの襲撃を決行した。竜頭を持つ船体に赤と白の帆を掲げ、ヴァイキングの男達は住み慣れた故郷を去り海を越えた。彼らは戦士達の故郷、古代スカンディナビアの根本的な民族伝承である北欧神話から得た教訓を胸に抱き旅立ったのだった。キリスト教徒から異教だと見なされたこの偉大なる神話は、戦いに明け暮れる神々と英雄らの叙事詩を綴ったもので、遥か昔から北欧人の精神に根付いていた。北の男達の共同体の戦士達にとって最強の神であり、全ての神の頂点に立つ最高神オーディンは彼らの願いを聞き入れたのか如く航海を助け、彼らが偉大なる栄光を得るべき土地を定められた……その名はリンディスファーン。幾多の窮地を潜り抜け、遂にノーサンブリアの孤島、リンディスファーンの地にやってきたヴァイキングの戦士らを出迎えたのは、なんとも脆弱な僧服に身を包んだ修道士たちだった。島の修道士たちはキリストの神の教え"法"に従い、ヴァイキング達から税を取り上げるために海岸へ出向いたのだった。しかしその考えは間違っていた。北の男達は美しく装飾された鋼鉄の長剣を抜き放つと、聖人らを皆殺しにした。まず彼らは海岸を襲い、瞬く間に切り落とされた残骸が周囲に転がった。神に祈ることしかできなかった修道士たちの前に振りおろされた冷たき鋼鉄の剣の一撃は、深くその身に食い込んだ。リンディスファーンの修道士達が信じたキリスト教の神は、ヴァイキングの齎した凄絶なる"恐怖"という現実には、何の力も持たなかったのである。そして神をも恐れぬ北の男達は、恐怖を恐れぬことが勝利者への確実なる条件だというのなら、彼らはまさに最大の勝利者だった。海岸を荒らし回った彼らは、遂には修道士らの聖なる教会にも襲いかかった。リンディスファーンの教会には、何世代にも渡って聖人らが収めてきた莫大な黄金、銀、宝石等で溢れ返っていた。修道院を徹底的に蹂躙し、祭壇を破壊した北の男達は戦利品として、その強大な富を手にした。戦いの神オーディンに定められた通り、この地に来ったヴァイキングの戦士達は莫大な遺品を舟で持ち帰ったのである。遂に災いはこの聖地に訪れ、島の司祭らは反撃する術もなかった。修道士らが身を守るために掲げた聖カスバードの十字架は、ヴァイキングの戦士らにとってはただ意味のない石の塊に過ぎなかった。彼らは何故武器を持たなかったのか。答えは実に簡単なものだった。神を恐れる精神を持つリンディスファーンの修道士達は、このキリスト教の比類なき聖地を襲撃するなど想像もできなかったため、かの地には剣で武装した人間など一人もいなかったのだ。この北の嵐の後、リンディスファーンの修道士達は残された聖カスバートの遺物を持って、島を逃れ北イングランドを当てもなく彷徨ったという。


Epilogue...

かくして北の嵐、そして北の竜は猛威をふるい、予言は果たされた。635年に創設されたこの聖地リンディスファーンの教会にかつてこのような災厄が訪れたことはなかった。教会は300年以上をも平和を保っていた。793年6月8日のリンディスファーン襲撃はキリスト教徒の世界に想像もつかない暗い絶望を投げかけ、影が支配者となった。このキリスト教徒の世界にとって最大の冒涜行為を行った者達はデーン・ヴァイキング北の男達の共同体の一部だった。リンディスファーンを発端として、後300年、北の嵐が収まることはなかった。彼らは生まれた時オーディンに、何物も恐れず屈しない意思と敵を殺す力とを授かっていたのだ。

 

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